無給油型トライボセラミックスの開発のための最初の研究として、ピン/ディスク型摩擦試験機を用いて、含油多孔質炭化ケイ素と一般の緻密質炭化ケイ素の摩擦摩耗特性を次の(1)〜(4)の項目について比較検討した。 (1)荷重依存性、(2)滑り速度依存性、(3)気孔率の影響、(4)ピンおよびディスクの組合せによる効果。その結果、ディスクに潤滑油(パ-フルオロポリエーテル)を含浸させることによって、緻密質炭化ケイ素同士に比較して荷重依存性および滑り速度依存性のない経時安定性のある低い摩擦係数と低い比摩耗量が得られた。また摩擦表面の走査型電子顕微鏡観察によるモルホロジーから、摩擦材料に含油多孔質炭化ケイ素を適用することによって、緻密質炭化ケイ素同士より表面損傷が少ないことが明らかとなった。多孔質炭化ケイ素の気孔率に関しては15〜20%以上の気孔率で上記の良好な摩擦摩耗特性が得られることが判明した。以上の結果から、無給油型トライボセラミックスの開発の可能性が得られた。 以上の結果を踏まえて、気孔率の異なる2種の多孔質炭化ケイ素ディスクに、一定滑り速度、一定荷重および一定摩擦時間の条件にて、グラファイトを摺動させ、グラファイト充填多孔質炭化ケイ素を作製した。その結果、無充填のものに比較して著しく低い、しかも経時安定性のある摩擦係数が得られた。しかし油含浸に比較して、グラファイト充填はディスクの表面層の充填であるため摩耗の点では不十分であることが解った。したがって今後無給油型トライボセラミックスとして、セラミックスの複合化を計画し、目的を達成するための計画を計っている。
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