油潤滑が適用しにくい極低温、高温、真空下などの極限環境で適用できるトライボロジー(摩擦、摩耗)特性に優れる無給油型のトライボセラミックスの開発を目的として、前年度は多孔質炭化ケイ素に低揮発性のフッ素系油を含浸した含油多孔質炭化ケイ素の摩擦摩耗特性と負荷条件との関連を検討した。その結果通常の緻密質炭化ケイ素に比較して含油多孔質炭化ケイ素は荷重依存性のない優れた摩擦摩耗特性もつことが明らかにされた。 本年度は引き続き含油多孔質炭化素の摩擦摩耗特性の摩擦速度依存性を検討し、このセラミックスが速度依存性もない優れた特性を示すことがわかった。以上のことから含油多孔質炭化ケイ素は従来の緻密質炭化ケイ素に比べて、荷重や摩擦速度の擢動条件に依らない優れたトライボロジー特性をもち、極低温などの環境で適用し得る無給油型のトライボセラミックスとして実用が期待される結果が得られた。 以上の結果を踏まえて、本年度はさらにフッ素系油の替わりに気孔率の異なる二種類の多孔質炭化ケイ素の開気孔部にグラファイトを充填したものについて、それらの摩擦特性を従来の緻密質炭化ケイ素と比較検討を行なった。その結果、グラファイト充填多孔質炭化ケイ素の摩擦係数は緻密質炭化ケイ素よりも安定した低い値であった。また摩擦特性は気孔率によって異なり、気孔率とこれに伴うグラファイト充填率を調整することによってグラファイト/炭化ケイ素系複合トライボセラミックスの実現の可能性が確認された。 今後、上記の試料について実用にそくした極低温や真空などの摩擦環境での摩擦摩耗特性を検討するとともに、新たにカーボン/多孔質炭化ケイ素系複合材を焼成調製して種々の無給油型トライボセラミックスの完全なる実現を目指す。
|