研究概要 |
最終年度にあたる本年度は,昨年度より実験精度を向上させるため,以下の点を改良した. (1)シールすきま内の液膜圧力分布ならびにロータ変位をデータをA/D変換する際のサンプリング周期を80musにして,従来の5倍の速さでデータを採取した.その結果,変動する圧力を詳細に精度良く測定することが可能になった(2)ロータの自転速度の範囲を広げ,最高速度を3000rpmまで上昇させた.したがって,自転速度がシールの特性に及ぼす影響がより明確になった. なお供試シールは昨年度と同じく,シールしゅう動面にハニカム形状(六角形)の孔を有するダンパシールを用いた.すなわち孔の深さの異なる三種類のダンパシール[ダンパシールI(孔深さ:300mum),ダンパシールII(孔深さ:400mum),ダンパシールIII(孔深さ:500mum)]と,ダンパシールのランド部とほぼ同じすきま(178mum)を有する平行環状フラットシールを用いた.実験結果より,以下の点が明らかになった. 1.同じ条件のもとでは,ダンパシールの漏れ量は平行環状シールの約2/3に減少した.また,ダンパシールでは孔の深さが大きい程漏れ流量が減少した. 2.ダンパシールIIの偏心方向流体力は負となりその大きさは平行環状シールと同程度になった. 3.いずれのダンパシールも接線方向流体力の大きさが平行環状シールより大きく,ふれまわり運動を抑制する力が大きい.また,ロータのふれまわり方向と接線方向流体力の方向が一致するふれまわり速度比Ω/ω(Ω:ロータのふれまわり角速度,ω:ロータの自転速度)の範囲(不安定領域)は,いずれのダンパシールもωにはあまり依存しないが,平行環状シールはωとともに増加する傾向を示した.そしてωの大きいところでは不安定となるΩ/ωの範囲はダンパシールのほうが平行環状シールより狭くなった. 4.主対角減衰係数はいずれのダンパシールも平行環状シールより大きくなった.また連成ばね係数の大きさはダンパシールII,IIIが平行環状シールよりも小さくなった. 6.以上の結果より,漏れ特性に関してはすべてのダンパシールが,またロータの安定性に関しては特に孔深さ400mumのダンパシールIIがそれぞれ平行環状シールよりも優れた特性を示した. 7.6の結果より,ダンパシールのしゅう動面に設ける孔の深さには最適な値が存在することが明らかになった.
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