研究概要 |
産業用ロボットに行わせる動作教示方法の一つとして,これまで「ティーチング・プレイバック」方式が圧倒的に多く用いられてきた.また,今後もこうした方式が多用されていくことは間違いのない事実であろう.一方,こうしたティーチング・プレイバック方式を用いた動作教示方法では,複雑な3次元的曲線を描かせるような作業をロボットに行わせようとすると非常に多くの労力を必要としてくるため,実際には作業効率の悪さが指摘されてきている.こうした現実を踏まえ,本研究では繰り返し順変換を用いることにより,ロボットの逆運動学問題を解かなくても等価的に逆運動学を解く手法の提案を行っており,いくつかの多関節構造を持つ産業用ロボットに本研究で提案する手法を適用しその逆運動学問題を解いてきた.こうした事例の中で,ロボットハンドの位置を変化させればその姿勢が変化し,また逆にハンドの姿勢を変えればハンドの位置が変化してしまうといった現象を起こらなくするために,ロボットハンドの位置とそのもつ姿勢を別々に評価できる考え方を導入した.このことにより,動作の繰り返し時に起こる無限ループの回避と同時に,計算効率の向上も図ることができることを明らかにしてきた. 本研究で提案する手法は,未知の対象物に対してロボットがその軌道を探りながら行っていくような作業動作への適用,あるいはロボット間の協調動作についても適用可能である.また,ロボットには可能な動作範囲が存在している.これに対して,可能な動作範囲内にない作業についてはロボットに冗長な自由度を付加することが求められる.このような冗長な自由度を有効たらしめるロボットの運動制御にも本研究で提案する手法は有効であり,今後の実用面での検討が期待される.
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