研究概要 |
本年度は主として固体潤滑剤の添加効果を評価する方法について検討した.得られた主な知見は以下のとおりである. 1.二円筒転がり滑り接触試験による固体潤滑剤を添加した潤滑油の耐焼付き性を調べた実験において,添加効果を,焼付き発生荷重,摩擦係数,電気抵抗法による二円筒間の分離電圧により評価できることを明らかにした.すなわち,固体潤滑剤を添加しても無添加の基油とそれらが全く変わらない場合と,表面に付着した固体潤滑剤によるものと思われる分離電圧の上昇があり,この場合は摩擦係数の低下と焼付き発生荷重の増大が認められた. 2.二円筒転がり滑り接触試験による転がり疲れ試験において,潤滑油添加剤の効果についてはこれまで相反する報告がなされており,また試験円筒の表面粗さの影響を敏感に受けることが判断が難しくしていた.この問題に対し,転がり疲れに支配的影響を及ぼす高硬さ側円筒を固定し,低硬さ円筒を試験油ごとに交換するという方法により,試験油による耐ピッチング性の違いを明確にできることを明らかにした. 3.揺動運動を支持する転がり軸受に発生するフォールスブリネリングと呼ばれるフレッチングによる異常摩耗について,(1)摩耗による内外輪の相対変位が一定値に達するまでの揺動数で定義すると寿命がワイブル分布に従い,(2)無潤滑の場合は荷重,揺動角,揺動速度に対し両対数グラフ上で直線的に減少する,(3)グリース潤滑の場合の油膜形成状態を電気抵抗法で測定できる.(4)作動条件による油膜形成状態の違いが摩耗と寿命に支配的影響を及ぼすこと,などを明らかにした.
|