キャビテーション壊食は、気泡が崩壊する際に発生する衝撃力が材料表面に繰返し作用して材料を破壊する現象であるが、材料表面に作用する個々の衝撃力がどのような圧力分布で材料表面に作用しているか明らかになっていない。本研究では、マグネシア単結晶を用いて塑性域の大きさや転位エッチピット間隔を測定して材料表面に作用する圧力分布を明らかにすることを目的とした。平成8年度の研究から5Nの衝撃力が作用したときの圧力分布が得られたので、平成9年度はこの圧力分布がオーステナイト系ステンレス鋼SUS304、純ニッケル、純銅、純アルミに作用したときの壊食ピットの形状を弾塑性有限要素法で解析した。その結果、ピット深さは0.2%耐力が小さい材料ほど深くなる。ピット深さはピット直径の約50分の1となり、干渉顕微鏡で求めた結果と一致した。有限要素法で計算したピット形状は表面から観察すると円形であるが、断面は深くなるにつれて急勾配となる先の尖った形状となり干渉顕微鏡の結果と一致した。また、材料が長時間キャビテーションにさらされると急速に壊食される部分と壊食されない部分が生じ、深い海綿状の壊食穴が形成される。この特徴的な深い壊食穴の形成構築について、マグネシア単結晶を用いて検討した。この結果、壊食穴の低部に転位列が密集して壊食されやすくなり、壊食部の深さが増大することが明らかになった。
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