キャビテーション壊食は、気泡が崩壊する際に発生する衝撃力が材料表面に繰返し作用して材料を破壊する現象であるが、材料表面に作用する個々の衝撃力がどのような応力分布で作用しているのかほとんど明らかになっていない。本研究では、マグネシア単結晶の(100)面を用いて塑性域の大きさや転位エッチピット間隔を測定して応力分布特性を解析した。その結果、キャビテーション気泡崩壊圧は材料表面に垂直に作用してせん断力は全く作用しない。キャビテーション気泡崩壊圧の最大値は500MPa〜1000MPaで高い圧力が作用している領域は非常に狭いが、作用半径の広い裾広がりの圧力分布になる。降伏点の異なる純金属を用いて一定荷重に対するピットの大きさを測定したところ、マグネシア単結晶で求めた圧力分布はほぼ妥当な値であることが有限要素法によって確認された。また、金属材料が長時間キャビテーションにさらされると急速に壊食される部分と壊食されない部分が生じ、海綿状の深い壊食穴が生じる。この深い壊食穴の形成機構についてマグネシア単結晶を用いて検討したところ、壊食穴の底部に転位列が密集して発生し、壊食されやすくなり壊食穴底部の深さが増大することが明らかになった。
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