研究概要 |
本研究の目的は,LIF法に基づく画像処理手法を利用した物質拡散場の瞬時濃度場計測システムの完成と,乱流拡散場の数値予測モデルの構築にあり,最終年度である本年度は以下の研究実績が得られた. 1. 蛍光色素の選定とスペクトル測定 レーザ誘起蛍光法(LIF法)を利用した乱流中における物質拡散場の瞬時濃度場計測システムの完成を目指し,まず,拡散物質として用いる蛍光色素の選定を行った.ローダミンB,ローダミン6G,およびウラニンの3種類の色素を用意し,それぞれの蛍光および吸収スペクトル分布を調べ,その結果,システムで使用するレーザ光(YAGレーザ)の発光波長に適合する色素として,ローダミンBとローダミン6Gの2種類を選定した.また,本システムでは変動濃度場の計測を目指すことから,濃度と蛍光強度の間に線形関係があることが望ましい.このため,これら2種類の色素についてその関係を調べ,1mg/l以下の濃度範囲で十分な線形性が得られていることを確認した.なお,これら2種類の蛍光スペクトルピークがそれぞれ異なる波長域にあることから,本システムを用いて2成分拡散場の同時濃度測定も可能であることが明らかとなった. 2. 数値乱流中におけるスカラ物質拡散場のラグランジュ解析 乱流直接計算手法(DNS)を用いて乱流速度場および物質拡散場をオイラー的に解き,これらから流体粒子の運動を計算しラグランジュ量を算出することで,物質拡散場のラグランジュ統計量の特性を調べた.計算対象とした場は,定常等方乱流中で時間減衰する一様スカラ場である.この結果,乱流速度場および拡散場のオイラー的な時間スケールとラグランジュ的な時間スケールとの関係を定量的に示し,また,ラグランジュスカラ特性量のスケーリング則についても明らかにした.以上の結果は,乱流中における物質拡散場や燃焼場の数値予測に極めて有望な計算手法として知られるpdf法の発展に多大な寄与をもたらすものと期待できる.
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