研究概要 |
本研究は軸流中の回転円筒上のねじれた速度分布の乱流境界層の乱流構造を実験的に解明しようとするものである。このためにまず平均速度とレイノルズ応力6成分をプローブ回転法により測定し,その変化の特徴,および平均流エネルギと乱れエネルギの収支を明らかにした。次に微小V型熱線プローブを用いて瞬時のu,v変動の時系列データを収録し,これより平均と変動の成分エネルギの収支,u,v変動のパワースペクトル,u,vのクロススペクトルを調べ,以下のような成果を得た。 層外主流速度と円筒周速度の合成速度U_<RO>を代表速度として,これにより無次元化したu,w変動の実効値u',w'は速度比によらずほぼ相似になるが,v'は円筒回転時の方が静止時より大きくなること,-uw/U_<RO>^2は速度比とともにやや減少し,-uv/U_<RO>^2は円筒回転時に壁近傍で非常に大きくなることを明らかにした。さらに,円筒回転時には渦動粘度が大きくなり,しかも等方的渦粘性の仮定は成立しないこと,混合距離が非常に増大することを明らかにした。 次に,平均流エネルギの対流項と拡散項は,境界層の外層部でほぼ釣り合い,速度比の増加とともに絶対値が減少すること,乱れエネルギの生成項と散逸項は,境界層全域にわたって支配的でほぼ釣り合っており,平衡境界層となっていることを確認した。また,u,v変動のパワーペクトル分布から、壁近くに大規模渦構造が存在することが示唆された。 さらに,平均流の成分エネルギの収支から,境界層の内層部では,Uエネルギに対しては生成,粘性散逸,粘性輸送項が損失,拡散項が利得であり,Vエネルギに対しては生成,粘性散逸,拡散項が損失,粘性輸送項が利得となること,外層部ではUエネルギに対する対流と拡散項,Vエネルギに対する生成と拡散項がそれぞれほぼ釣り合うを明らかにした。また,u,v変動のクロススペクトルから,内層部にはスペクトルの低波数域にuとvの強い相関があり,大規模渦構造と関連していることが示唆された。
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