内球回転2球間クエット流の層流一乱流遷移における速度変動の消滅現象に注目し、実験、数値計算と理論によりこの現象の解明に取り込んでいる。本年度で実施したすき間比0.14の場合の実験結果から、次のような結論が得られた。 1、1.74<R^*<1.95では(R^*はレイノルズ数比で、R^*=Re/Recで定義されている。ここで、Reは回転レイノルズ数、Recは臨界レイノルズ数である)、速度変動の相関次元dが2.1であり、またポアンカレ断面はほぼ環状のT^2トーラスを示し、準周期状態と見せるが、R^*=1.90でのポアンカレ断面には折り畳み構造が現れる。また一次元再帰写像には勾配がほぼ0で不可逆となる部分が現れ、このR^*でもレイノルズ数の増加に伴い攪乱成分の非線形性が強まることがわかる。 2、赤道上のすき間中部での変動速度のrms値は、R^*=2付近での急激な増加からR^*=6.5付近での急激な減少までの間、ほぼ一定の値を保つ。 3、R^*の増加に伴う方位角の変動速度のrms値のすき間内分布の変化は非常に複雑である。一方、天頂角の変動速度のそれは比較的単純であり、またその分布は内外壁近傍で極値を持つ。 4、R^*の増加にともない流れ場は次のようなシナリオ:定常状態-->周期状態-->準周期状態-->カオス-->周期状態-->定常状態-->周期状態-->カオス:を辿る。 また、数値計算については新しい数値アルゴリズムにより球面座標における非圧縮性ナビエ・ストークス方程式の高精度差分数値解析コードを完成させた。そして、実験と同じすき間比の内球回転2球間クエット流の数値計算を行い、実験結果及び従来の数値解析と比較して、このコードの有効性を確認した。
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