研究概要 |
1.トロイダル気泡の力学解析 トラベリング気泡におけるジェット貫通後の力学を扱う第一段階として,軸対称を仮定して,2個の気泡および種々の壁面(曲率を持つ壁面および弾性壁)近傍で気泡の崩壊挙動を境界要素法を用いて解析した.本解析では,マイクロジェット貫通後のトロイダル気泡の力学を扱うとともに,圧力場を評価する時のポテンシャルの時間微分の扱いに,従来用いられていた差分的な手法に代えて,境界要素法を応用した独自の手法を提案し,その有用性を示した.主たる結果は以下の通りである. (1)マイクロジェット貫通後は.ジェットの貫通部にジェットのせき止め効果による高圧領域が形成される.高圧領域が形成される位置は,壁面の特性および形状に依存する.壁面が硬く,凹のくぼみがある場合には,気泡の壁面方向への並進移動量が大きくなり,高圧領域が壁面近くに形成される.その結果,凹面近傍で気泡が崩壊する場合の方が,凸面近傍で気泡が崩壊する場合よりも壁面圧力は高くなる. (2)凹面の場合に壁面圧力がより高くなることは,いったん壁面のある場所に損傷が発生し凹面ができると,そこが他の場所よりも高圧にさらされることを意味することから,この効果は壁面損傷の要因の一つとなっているものと推察される. (3)弾性壁の特性を自由境界の特性に近づけることにより,マイクロジェットの向きを反転させ,壁面の圧力上昇を抑制できる. 今後,本解析手法を3次元トラベリング気泡の力学に適用する. 2.トラベリング気泡群モデルの構築 2次元渦法と球形気泡群モデルを適切に用いることにより,2次元物体周りのトラベリング気泡群の力学を扱った.本解析においては,気泡を含む巨視的な流れ場の解析に重点を置き,定性的には,円柱周りの気泡の挙動が扱えることがわかった.現在,発生させる離散渦の取り扱い(渦の個数・時間間隔)ならびに気泡モデルの妥当性の詳細を検討中である.
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