電磁流体力学発電(MHD発電)は、従来の蒸気タービン方式の火力発電と比較して高い発電効率が期待できるため、世界各国で現在積極的に開発が進められており、より規模の大きい実証用発電機の設計を行う段階に達している。その際、発電機の性能を的確に予測するためには、チャネル内プラズマの流動状態を理論的に解明する手段を確立しておかなければならない。いっぽう、計算機シミュレーションで現象を予測するためには、基礎となる物理量に関するデータが必要であり、MHDプラズマの場合には電子-中性粒子間衝突断面積のデータが要求される。この衝突断面積は、発電機性能の予測を左右する重要な量であるが、MHDプラズマに近い条件下でこれを実験的に検証した例はない。本研究は、遠赤外レーザー法を実用MHD発電機のパラメータに近い希ガス衝撃波風洞MHDプラズマに適用し、衝突断面積を実験的に評価して、大規模MHD発電機設計用の衝突断面積のデータベースを構築することを目的とする。本研究において、得られた結果を以下に述べる。 (1)衝撃波風洞の持続時間は1msであったが、本年度は衝撃波風洞の低圧室の長さを延長し、持続時間を2msまで増加させた結果、電子密度、導電率および従来よく分かっていなかったシ-ド率を高精度で測定することができるようになった。 (2)衝撃波後のプラズマの非平衡性を考慮したデータ解析を行うため、非平衡電離理論に基づく数値計算コードを開発し、プラズマの状態を理論的に推定する手法を確立した。 (3)以上の成果を総合し、よどみ室内プラズマの電子-中性粒子間衝突断面積を測定することができた。その結果、同断面積はこれまで発電性能の評価に使用されていた値と比較して20%程度小さいことが分かった。
|