作動気体としての湿り空気が、超音速ノズルによる超音速流れ場およびバンプノズルを用いた遷音速流れ場で急激に加速膨張する際に生ずる非平衡凝縮が、流れ場の衝撃波や境界層に及ぼす影響について、光学観察と圧力計測により実験的に調べた。また、凝縮を伴う圧縮性流れ場を、MUSCL型3次精度TVD差分スキームを用いた数値解析により明らかにした。得られた結果を要約すると、次の通りである。 1.湿り空気が超音速流れ場で膨張する場合の流れ場に及ぼす影響 (1)襲撃波と凝縮領域の位置関係を明らかにした。衝撃波への流入マッハ数が小さい場合、凝縮の影響が強くなると衝撃波への流入マッハ数が減少するため衝撃波定在位置は上流側へ移動する。一方、衝撃波への流入マッハ数が大きい場合には、凝縮の影響が強くなると衝撃波背後の境界層の発達が抑制され、圧力回復が良くなるため衝撃波定在位置は凝縮がない場合より下流側へ移動する。 (2)凝縮の影響が境界層厚さに及ぼす影響を明らかにした。凝縮の効果が弱い場合には、流れ方向の境界層排除厚さδは凝縮がない場合と比べて減少する。一方、凝縮の効果が強くなると、凝縮領域下流ではδは減少するが凝縮領域内では増加する。なお、凝縮を伴う流れ場の壁面摩擦係数および圧力変動は、凝縮がない場合と比較して減少する。 2.湿り空気が遷音速流れ場で膨張する場合の衝撃波に及ぼす影響 (1)流れの初期相対湿度S_0が小さく衝撃波により境界層がはく離する場合S_0が増加すると衝撃波によるはく離が回避される。 (2)S_0の増加とともに、衝撃波の定在位置は上流側に移動し、衝撃波による圧力勾配は緩やかになる。 (3)S_0の増加とともに、衝撃波近傍の圧力変動値は小さくなる。また、衝撃波背後の圧力変動は、特にその高周波成分が抑制される。
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