通常遠心ファンは、スクロール内に羽根車を設置して使用される。この場合、スクロールは羽根車を出た流れの圧力の回復を図る。また、舌部が羽根車との干渉による騒音発生や流力性能の問題を生じる。一方、空調などの低圧ファンでは羽根車から出た流れが熱交換器に直接流入する。このため圧力回復の部分が無く、有効に利用されるのは静圧のみである。また、流速や圧力の分布の羽根高さ方向および周方向の均一性が重要である。 これらの点に注目して、低圧ファンの適正条件を調べた。その結果、羽根車の入口出口面積比がおよそ0.8〜1.0においては、翼間流れが羽根高さ方向に均一で良好な条件が得られる。これは乱流騒音を多少増加させるが、流体力学的性能を向上させ総合的には性能が向上する。羽根を高さ方向へ傾けた3次元羽根は、スクロールがある場合は舌部との干渉を押さえる効果があるものの、スクロールがない場合は羽根車と熱交換器との干渉が小さいために意義が少ない。さらに、羽根高さ方向に偏り流れが生じやすいために流動条件としてはあまり好ましくない。 口金すき間が大きいと漏れ流れが増加し、流体力学的には性能の低下をもたらす。一方、すき間が小さいと製作誤差による周方向不均一さの影響が大きく現れ、もれ流れが周方向に偏流を生じ羽根車との干渉騒音を発生させる。また、羽根車前縁の口金部からの出っ張り長さは、流体力学的には無い方が良いが騒音特性としては口金すき間からの周期的な吹き出し流れを乱して周期性を弱めるために、干渉騒音を多少減少される効果が得られる。このことから、口金すき間が小さく羽根前縁を若干出すことで比較的良好な性能が期待できる。 以上のことから、空調等に用いられるファンに必要な諸条件が実験的に得られた。これらをもとに次年度は流体力学的特性及び騒音特性の両面を考慮した適切な設計法を開発する。
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