昨年度の実験結果から、空調などに用いられる従来の低圧遠心ファンの流動特性とその問題点を明確にした。本年度はその結果をもとに、流体力学的特性と騒音の特性の向上を計る目的で、ファンの構成要素の相互の関係を調べてマッチングを試みた。昨年度の結果から、羽根車の入口出口面積比がおよそ1.0近くで低圧ファンの流体力学的特性が良好となることより、このような条件のもとで羽根の形状・材質を変化させて、羽根車流出後に置かれる装置とのマッチングの特性を調べた。 その結果、羽根の弦長を長くすると羽根の負荷分布が緩やかになるために羽根の性能は多少良くなる。弦長の20%程度の変化に対して10%程度の圧力の上昇を期待できる一方、効率はほとんど変わらない。また、羽根車での速度分布はあまり変わらず騒音の特性にはほとんど相違は現れなかった。ただ、低圧の遠心ファンでは羽根車入り口から出口までがどうしても短くなるために前面シュラウド側の流れに比較的大きなひずみが生じそれが大きな影響を及ぼしている。 騒音面の特性の向上を図る目的で羽根の材質を吸音性のあるものにしたが、その効果は得られなかった。逆に羽根表面での摩擦の増加によって損失が若干増加する傾向にある。 羽根車とその出口に置かれる装置(熱交換器や静翼、駆動用支持装置など)とのマッチングの関係では、羽根車にそってまわりを円周状に囲む場合には流れの特性、騒音の特性ともに良好であるが周方向に不均一、非対称な配置のものがあると流れの偏流が大きく、流体力学、騒音両特性ともに大幅な悪化をもたらす。しかもその影響は離れた場合にも大きい。 以上のことから、空調等に用いられる低圧遠心ファンの羽根車の総合的な特性が評価できた。現在それをもとに設計段階で以上の評価ができうるような推定法を検討中である。
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