本研究はガスタービンに用いられる遷音速翼列において発生するとされる衝撃波を伴う空力不安定現象の抑止に役立てる事を目指して、二次元遷音速翼列に関して、まず実験面により、衝撃波の翼間流路での挙動、特に変動現象を明確にし、次に数値解析面からの検討を加え、衝撃波変動が遷音速翼列の空力不安定性に与える効果を調べたものである。 平成10年度は、前年度までの結果をふまえて実験面での改善をはかり、さらに数値計算結果との比較検討を行なった。翼列として重要な食い違い角を有する場合(本研究では30度)について、観察された衝撃波自励的振動現象の状況(発生パターン、周波数)には食い違い角のない場合と比較し、支配周波数の決定が単一ではない、2つの周波数が共存する場合がある等の違いがみられた。これらについてはさらに詳細な検討が必要であると判断される。同時に実験に相当する条件での数値シミュレーションを行ない、実験と同様の衝撃波自励振動現象を再現することができた。その平均位置では計算の方が実験値よりやや後方に位置すること、周波数では計算の方がやや低いとの違いが見られたが、全体として計算の妥当性を示すことができ、さらに発生した衝撃波自励振動が翼列翼に大きな非定常揚力、非定常空力モーメントを作用させることを示した。以上、総括すると、遷音速翼列の空力不安定性を検討する際に翼間に発生した衝撃波変動効果の重要性を指摘し、特に初生段階のきっかけとなる衝撃波自励振動現象について、実験面からの定量的資料を提供することができた。これらは今後の理論的メカニズム検討、モデル構築に貴重な情報となるものと考えている。さらに数値解析の面から、衝撃波振動の翼列非定常空力に及ぼす効果を明確に示すことができた。今後、これらの知見を用いて、翼列に対する衝撃波振動メカニズムモデルを構築し、現象の抑止研究につなげて行きたい。
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