本研究は、ガスタービンに用いられる遷音速翼列において発生するとされる衝撃波を伴う空力不安定現象の抑止に役立てる事を目指して、二次元遷音速翼列に関して、まず実験面により、衝撃波の翼間流路での発生、移動、消滅などの挙動、翼面境界層との干渉等の現象を明確にし、次に数値解析面からの検討を行い、両者の比較検討をとおして、衝撃波変動が遷音速翼列の空力不安定性に与える効果を調べた。 実験的研究面について、まずはじめに本実験研究の中心的課題である翼列翼間流路において発生する衝撃波挙動計測のための定量的可視化計測システムを開発した。次に、二次元静止翼列に関し、2つの翼列条件(食い違い角0、30度)の場合について、衝撃波挙動の定量的データを得る事に重点をおいた実験を行った。観察された衝撃波の自励的振動現象について、衝撃波の変動位置、変動周波数を得て、これより食い違い角0度に対する基本的振動メカニズムモデルを裏付けることができた。一方30度の場合、観察された衝撃波の自励振動現象の状況(発生パターン、周波数)にはこれとは異なる面があり、なお詳細な検討が必要であるとの結論を得た。 数値解析面については、二次元遷音速振動翼列の場合に関して、翼間衝撃波が発生している作動状態を中心に計算を行い、振動翼列の非定常空力特性、翼面上空力仕事さらに衝撃波変動との関連を調べた。その結果、非粘性計算では空力安定と判定される場合でも、粘性計算では衝撃波の変動効果により空力不安定となる場合があり得る事を示した。 以上、まとめると、遷音速翼列の空力不安定性を検討する際に、翼間に発生した衝撃波変動効果の重要性を指摘し、特に初生段階のきっかけとなる衝撃波自励振動現象について、実験面からの定量的資料を提供することができた。これらは今後の理論的メカニズム検討、モデル構築に貴重な情報となるものと考えている。
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