研究概要 |
圧縮性乱流の基礎研究として,大きさや強さが異なる渦輪が相互作用運動をするときに現れる現象,渦の合体,追い抜き運動や生成される衝撃波等の状態を実験的に調べている.本年度は,衝撃波管から大気中に放出された衝撃波の後に生成された渦輪とその背後のジェット流の運動状態を,パルスレーザを光源として用いたシャドウグラフ法によって時間発展的に観測した.得られた新しい知見は以下である. 1.生成直後の渦輪は徐々に成長して,自己誘導速度で進行する安定な渦輪になる.渦輪の半径程度の距離まで進行すると,渦核から渦輪の中心に向かって衝撃波が生成され始め,渦輪の内面を覆う面衝撃波となる.これは上流側へ徐々に進行して行き渦核から離れる.新たな衝撃波が再び渦核から生成し始める.この時刻付近で渦輪の前面に非常に細い小さな渦輪が現れる.この小渦輪は,時間と共にその直径を増しながら,主渦輪の渦核の外側を通って後方に回り込む.この過程で小渦輪の渦線は次第に乱れて波打ってくる.その小渦輪は,衝撃波面が切れた時に後方のジェット流が瞬間的に流れ込んで,主渦輪の前面に作られたものと考えられる.またその運動は,主渦輪の渦核の巻き込み流れに乗って後へ移動すると考えられる.小渦輪の生成後,主渦輪の渦核は乱れ,渦線には波が成長する.その後渦輪前方へのジェット波の流れ込みが生じ,主渦輪はこの流れを巻き込んで,渦核は大きくなり乱流状態へ移行すると考えられる. 2.ジェット流中に生じた初期の渦輪列は,明確な渦輪として見られず可視化によって観察することができなかった.しかし,衝撃波管の出口に衝突して反射した衝撃波は,ジェット流中の渦輪を励起して,明瞭な渦輪列を作り出すことが分かった.これらの渦輪列は,追い抜き運動を次々と行う.しかし,後の渦輪は,前の渦輪を完全に追い越すことはできずに合体し,渦核は太くなり,渦線には不安定波が生じる.
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