研究概要 |
本研究は,発電所等の水蒸気サイクルにおける復水器(コンデンサ)や,空調機器における凝縮器などで用いられている高性能凝縮管の電熱性能の向上を目的とするものである.これらの凝縮管では,伝熱面積の増大と熱伝熱率の向上のために,管外面にロ-フィンが加工され,その高さ・ピッチ・形状などを最適化するよう工夫されている.しかし,水蒸気の凝縮では,水の表面張力が大きいため,凝縮液がフィン間に充満し,有効な伝熱面積が大幅に削減され伝熱が劣化する.本研究では,電場を利用して,フィン間に滞溜する凝縮液を排除することによる伝熱促進法に関して,以下のような基礎的研究を行った. 凝縮室内にロ-フィン付円管を水平に設置し,管内に冷却水を流して,凝縮室内の水蒸気が円管外面のロ-フィンに凝縮するようにした.フィン間のピッチが1mm程度の場合には,凝縮管のおおよそ4分の3のフィン間に凝縮液が充満した.本研究では,フィン付凝縮管の底部側に,凝縮管から1〜2mm離して電極線を1本水平に張り,これと凝縮管との間に直流電圧を印加した.この印加電圧をある値以上に大きくすると,ロ-フィン間に滞溜している凝縮液は電極線に引き寄せられ,その結果凝縮有効面積が増えて熱伝達率が増大した.例えば,印加電圧を1kVまで上げると,凝縮熱伝達率として70kW/(m^2K)という値が得られたが,これは電場のない場合の水平円管外面上凝縮熱伝達率の約5倍,ロ-フィン付凝縮管での熱伝達率に比べても約2倍の値である.観察と解析の結果,電場によって凝縮液が電極線に引き寄せられる現象は,一種の気・液界面不安定現象であることが確認された.なお,水の場合には導電性のためにある限度以上の電圧を印加することが難しい.その対策として,電極線を絶縁するなどの対策が必要であることも判った.
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