超流動ヘリウム(HeII)流路内で発熱があると、HeII特有のいわゆる内部対流とよばれる熱輸送機構が生じる。現在ではこの内部対流熱輸送機構について、一次元的な特性が明らかにされているのみで、普遍的な流路形状や発熱形態、あるいは流路内で相転移を伴う場合についての特性についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、HeII冷却流路内で相転移が生じるような場合も含めて、実験から二次元的な流路内の熱輸送特性を明らかにした。 本実験ではさまざまなHeII冷却流路の形状や姿勢、発熱形態において、流路内の温度分布を計測した。まず極低温で熱伝導率が小さく工作性に優れるFRP(繊維強化プラスティック)によって、模擬冷却流路を制作した。流路断面は矩形とし、断面の縦横長の比が異なるものをいくつか用意した。流路内の一側面には、フィルム状のヒーターを張り付けて発熱部とした。今まであまり着目されなかったHeII流路内熱輸送の二次元性や、相転移後の熱輸送の機構を明らかにできるように、温度計測素子の取り付け位置や熱入力方法について配慮した。 流路内がHeIIで満たされているときは、流路の縦横比が20程度より小さくなると温度分布に2次元性が表れることがわかった。熱入力量が大きく流路内で相転移が生じると、過冷却状態のHeIの自然対流により2次元的な熱輸送となりヒーター表面と流路上部が高温となることがわかった。またこのときのHeIの温度境界層の厚さは、数ミリ程度であることも明らかになった。
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