研究概要 |
加熱実験装置の設計・改良:垂直加熱管内に空気-水系噴霧流を流し,その局所的な伝熱面温度と液膜厚さが測定可能な実験装置を既存装置を基に設計・改良した.伝熱試験部に流入する空気および水の質量流量を高精度かつ電気的に測定するため,微差圧計と細管流路から構成される層流型流量計を自作した.伝熱試験部には薄肉ステンレス細管を用い,壁面温度は試験部管外壁にスポット溶接されたK型熱電対と既存の低速度多チャンネルA/D変換器により測定した.液膜厚さ測定はコンダクタンスプローブ法(ストレインアンプ,電気伝導度計を使用)を用い,加熱液膜の測定を可能とするため試験部に特殊加工を施した.液膜厚さデータは壁温変動に比し比較的高速なため,高速A/D変換器とパーソナルコンピュータで測定し,大容量磁気ディスクに保存後WSでデジタル処理を行った. 得られた成果:液膜厚さ測定実験は,空気流量(=空気流速)を一定とし,噴霧水量および壁面熱流束を変化させながら行った.加熱液膜厚さをコンダクタンスプローブ法により測定する場合,蒸発によるKCl濃度の増加に伴う電気伝導率の見積りが非常に重要となる.本研究では,先に構築された数値計算手法により試験部流れ方向の蒸発量を予測し,これとあらかじめ測定された種々の濃度のKCl水溶液の電気伝導率を対応させることにより,従来ほとんど行われていない加熱液膜の厚さ測定を可能とした.本手法で得られた平均液膜厚さは,液膜を層流と見なした解析値と妥当な一致を示し,このことから本測定手法の有効性が確認された.また,測定された液膜波形は,熱流束が高く液膜水温が上がるにつれ滑らかになる現象が見られた.液膜表面の派性状は,流動様式,液膜からの液滴発生,気液界面せん断力などに影響をおよぼすと考えられる.つまり,加熱の度合いに伴い波形が変化するということは,これらの諸量も変化するということを示唆するものである.
|