合成繊維屑の再利用(リサイクル)システムの構築の一環として、繊維屑集合体の表面近傍のみを遠赤外線により加熱溶融した後、圧縮固化させることによって内部に繊維層をもった断熱性に優れた板材を成形する手法の確立を目的とし、本研究ではとくに表面プラスチック固化層の成形性を左右する遠赤外線加熱下の合成繊維屑集合体内部の伝熱特性と繊維屑の溶融挙動を明確にした。 具体的には上部が開放された金型内に繊維集合体を挿入し、加熱炉内において上部から遠赤外線ヒタ-で加熱溶融し、そのときの繊維集合体内の温度場の時間的変動および溶融挙動に及ぼす加熱時間、加熱温度、金型温度、繊維集合体の初期みかけ密度などの影響を考察した。繊維屑としては合成繊維織物の織り工程で大量に発生するひも状のポリエステルを用いた。実験の結果、加熱温度を高くすると所定量の溶融に必要な時間は短縮されるが、短時間での金型温度の上昇が追従せず、この場合も金型周りの繊維屑の溶融が悪くなるとともに高温による樹脂の焼けが生じる問題点が生じた。そこで一例として金型厚みを薄くすることを試みた結果、迅速な金型温度上昇が得られ、短時間の均一溶融化が可能になった。その他、加熱温度と加熱時間が同じである場合、溶融量は金型設置時の繊維屑集合体のみかけ密度に依存しないことも明らかになった。さらに、板材の断熱性能向上と軽量化を計るために、表面層にガラス繊維入りペレット樹脂を配置し、表面の複合材料化を試みた。この場合も均一な溶融が得られたがガラス繊維束内への樹脂の含浸が悪いと成形品の強度に問題が生じることが明らかになった。
|