研究概要 |
本年度は,回流水槽を用いることにより,多孔質体を通過する流れの流動特性を実験的に検討した.テストセクションには,ナイロン粒子からなる一列球充填層を用い,多孔質体を模擬している.測定に関しては,面積流量計による流量測定,テストセクションに取りつけられた静圧タップにより圧力測定,二色の色素をトレーサーとした可視化を行っている.また局所速度の測定に関しては,平行流形のサブミニチュアフィルムプローブを用いている. (多孔質内流れの乱流遷移過程の検討) 多孔質層の圧力損失は,低数域では速度に比例し高数域では速度の二乗に比例することになるが,本実験結果も概ねこの傾向を示した.色素流脈法による可視化から,Re〜40までは流脈は安定し,流れは層流であることが確認された.しかしながら,Re数の増加に伴い流脈に乱れが生じ,混合拡散現像が顕著になることが認められた.さらに,高Re数領域では周期的に固体を迂回する流れも認められ,分散に対し重要な役割を果たしている.この結果は,多孔質内の流れは高Re数では乱流へと遷移し,Forchheimer抵抗が生じることを意味する。 (乱流渦輸送機構の検討) プローブを主流に対し45°回転させた場合には,速度変動のパワースペクトル密度分布に卓越周波数が若干認められ,球の左右から交互に迂回する流れの存在が確認できた.しかしながら,プローブの向きを主流方向と対向するように配置した場合には,卓越周波数は検出されなかった.これは.球の左右から交互に迂回する流れの平均速度に差がないことより,卓越周波数の速度変動への速度差の寄与分が減衰したためである.さらに,これらの結果は,固体を迂回する流れによる混合は運動量の交換にはほとんど寄与していないことを示唆する.また,St数が1程度の値から,平均速度と乱れエネルギ速度が同程度であると見積もれば,固体を迂回する流れによる混合距離は直径のオーダーと評価できる.
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