懸濁液の自然対流のメカニズムを解明するために、次の2種類の実験を行った。(1)垂直冷却壁・水平加熱壁をもつ矩形容器内における自然対流、(2)垂直加熱・冷却壁間における自然対流。 実験(1)では、幅80mm、高さ120mmの矩形容器内に懸濁液を入れ、両垂直壁を一定温度に保ちながら底面中央部幅40mmの面から加熱し、自然対流を発生させた。上下に多数の層が形成され、時間と共に消滅する過程が調べられた。液相に蔗糖水溶液を用いた場合、蔗糖の濃度を増加させると、ストークスの落下速度が減少し、層が消滅する時間が長くなる。塩化ナトリウム水溶液の場合、1wt%以下の低濃度の水溶液であっても粒子の落下速度が速くなり、層の消滅する時間が短くなる。この結果は粒子の分散に対する電気二重層の機能を添加されたイオンが抑制することにより生じると説明された。液相に水を用いた実験において、壁面間温度差を大きくすると、温度差による対流が活発になり、層の境界が上昇し、加熱面上の熱伝達係数が大きくなり、層の維持時間が短くなる。粒子の粒度分布を狭くすると、多数の層は形成されず、2層のみが形成される。このとき、層境界面は実験開始後初めゆっくりと降下し、その後急速に上昇して水面に達し、層は消滅する。 実験(2)では、粒子濃度0.5、1.0、1.5wt%のガラスビーズ-水懸濁液を幅40mm、高さ160mmの矩形容器内に入れ、垂直2壁面に10℃の温度差を付けて層の形成消滅過程を調べた。2成分溶液の2重拡散対流と同様に上下に層が形成された。2成分溶液系と異なり、層境界は時間と共に一定速度で降下し、最後にすべて消滅した。懸濁液の垂直方向の温度分布は層の境界で急激に変化し、層が対流セルを形成していることを示した。層境界面の降下速度は初期粒子濃度が低いほど、下側の層ほど大きい。
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