研究概要 |
本研究では,最新の並列計算機を用いることにより,高いレイノルズ数乱流のDNSを行い,それによって,従来得られていた乱流諸量や乱れの準秩序構造やエネルギー収支の分布か,より高いレイノルズ数において変化するか否かを明らかにすることを目的とした.研究の対象とした乱流は,温度勾配を有する平行平板間乱流である.一般に,乱流のレイノルズ数が高くなればなるほど大きなメモリ容量を必要とするため,本研究のDNSは並列計算機を用いて行った.並列計算機では,メモリの管理はそれぞれの演算装置が受け持つため,大容量化がより容易であることによる.使用した並列計算機は航空宇宙研究所の数値風洞(NWT)である.解析は,まずレイノルズ数が約5600の平行平板間乱流について,プラントル数が0.025〜5までの広い範囲の流体についての乱流熱伝達のDNSを行った.その結果,乱流熱流束の輸送方程式の収支及び温度変動バリアンス等の乱流統計諸量を得た.とくにプラントル数5についてのDNSは,世界的にも最初の成果で,これにより得られた乱流プラントル数の流路分布は,これまでの多くの議論に一つの結論を与えたものである.その後さらにレイノルズ数を増加させ,レイノルズ数約11,000のDNSを行った.これは我が国ではこれまでに行われた最も高いレイノルズ数である.その結果,固体壁近傍において,従来実験的には見出されていたが低レイノルズ数のDNSでは見出されていなかったいわゆるヘアピン状の渦構造が現れることを見出す等の成果を得た.
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