研究概要 |
本研究は,二成分不溶性混合媒体を作動媒体としたヒートパイプを提案しその伝熱メカニズムを明らかになることを目的としている。この種の媒体は,従来の低沸点有機冷媒に潜熱や熱伝導率など熱的性質に優れた水を付加したものであり,液相状態で互いに混ざり合わずかつ表面張力に大きな差を有する.従ってヒートパイプの使用に当たり,冷却部における有機物の膜状と水の滴状からなる複合凝縮機構,および加熱部における分離した上下二液相の沸騰・蒸発機構を操作条件(蒸気組成,加熱・冷却温度)管形状・寸法・姿勢,作動液の種類などと関連づけて明らかにする必要がある. 以上の観点から,本年度,ヒートパイプに関する技術開発の動向について仕様として要求される性能・特性等および種々の混合媒体の組み合わせの可能性について調査検討を行い,以下の基礎実験を行った.具体的には,内径18mm長さ1500mmの銅管を鉛直に用いウィックレスのサーモサイフォン型の実験装置を製作し,管壁一管内中心温度分布,管内圧力,熱輸送量の測定を行った.また同寸法のパイレックスガラス管を用いた実験装置を作成しヒートパイプ内部の現象観察を行った.いずれも供試試料として塩素Clを含まず沸点が水と比較的近いパ-フロロカーボンC_6H_<14>を選び,これと水とからなる二成分不溶性混合媒体を用いた.操作条件として供試媒体の混合割合を6通り設定し,加熱部供給電圧,冷却部温度を種々変化させた. その結果,二液の混合割合による加熱部の伝熱特性の相違はほとんどみられないものの,発生する蒸気組成は二液の混合割合のほか加熱条件により大きく異なり,設定した混合割合に必ずしも一致するとは限らないことが明らかになった.冷却部の伝熱性能はこの蒸気組成に大きく支配される結果,トータルとしての熱輸送特性に影響を及ぼしていることが明らかとなった.
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