水と不溶性の冷媒液を水中に注入し、直接接触熱伝達により生成される円盤状の氷は流動性に優れ、氷水スラリーによる冷熱貯蔵・輸送技術に有望であるが、その生成機構や流動特性はほとんど解っていない。これは氷晶の初生や成長過程の挙動の観察が困難であるためである。本研究では、流動しながら成長する氷晶の観察手段を確立し、その観察手段を用いて、実験パラメータによる氷晶の初生条件や成長過程の観察を行い、その生成機構を検討する。また、生成された氷晶の流動特性と融解伝熱特性を明らかにする。そのために氷晶の初生および成長過程の顕微鏡観察が可能な氷蓄熱実験装置を設計・製作し、冷媒フロリナ-トの温度と流量を主要パラメータとして、蓄熱漕の冷却特性と温度分布の測定、円盤状氷の成長過程の顕微鏡観察・解析を行った。次に、液液直接接触製氷過程の能動的制御法を探求する目的で、氷の凍結過程に及ぼす超音波振動の影響を調べた。 得られた新たな知見は以下の通りである。 (1)蓄熱漕の温度分布は冷媒による攪拌効果で比較的均一な状態で直線的に温度降下し、氷点以下になると0.1K〜0.5K程度過冷却した後、氷晶が生成されると過冷却は急速に解除されほぼ0℃の一定値となる。 (2)氷晶はきわめて薄い円盤状で、直径と厚さの比がほぼ一定の状態で、時間の経過とともに直径の増加割合を減少しながら直径3mm程度まで成長を続ける。 (3)氷晶が複数個団塊となると、個々の氷晶の形態は円盤状から樹枝状へと変化しながら成長する。これは団塊になることにより氷晶の運動と水の流動が制限され、過冷却の程度が局所的に変化するためと考えられる。 (4)水を吸水した濾紙を流動中のフロリナ-ト冷却液に浸積し、凍結挙動を調べたモデル実験において、超音波振動の印可により凍結温度が約5℃上昇し、過冷却解除に有効であることが判明した。流動特性の検討は今後の課題として残った。
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