ER流体は、電場の印加によって粘性を数ミリ秒のオーダーで可逆的に変化できる機能性流体であり、その特徴によりER流体を作動流体とする流体回路では、全く可動部を持たない電極部だけからなるERバルブを用いて流量や圧力を制御することが可能となる。このようなERバルブを用いたアクチュエータの制御など流体制御機器への応用が試みられている。 本研究では、粒子分散系ER流体を用いたERバルブのPWM波電圧による流量制御を提案し、二つの平行平板電極からなる基本的なERバルブに関してPWM波による圧力・流量の制御特性を実験的に検討しERバルブの設計と制御法に対する指針を提示した。さらに、2つのERバルブから成る3ポートのERバルブで駆動される小型のベローズアクチュエータを試作し、2つのERバルブをPWM制御するときのその制御方法と制御特性について実験的に検討し、ERバルブのPWM制御のアクチュエータ駆動における有効性を明らかにした。 分散系ER流体の場合には通常の可動弁と同様な静的流量制御特性をPWM波のDuty比を可変することにより実現でき、Duty比が1で全閉状態を、0で全開状態をバルブ間圧力差に依存せず実現でき、DC電圧印加では困難であると考えられた閉鎖から全開までの連続流量制御が可能となることを明らかにしている。Duty比に対する流量特性については、ER流体の応答速度のためにキャリア周波数が高くなるほど線形性が失われる。また、PWM波の振幅については、系の最大圧力差時のバルブ閉鎖電場強度以上の電場強度振幅は流量特性には影響を与えないことから、その圧力差における閉鎖電場強度以上の電圧振幅を設定すればよいことを提示した。 さらに、3ポートERバルブによるベローズアクチュエータの制御では、2つのERバルブへのPWM波のDuty比を制御電圧に比例して可変してベローズへの流出入流量を制御しベローズアクチュエータを駆動する制御方法を提案し、その有効性を示した。特に、制御電圧が0Vのときの両ERバルブのDuty比のオーバーラップ量を設定することにより、系の線形性が確保されると同時に制御特性も改善されることを明らかにしている。DC電圧制御の場合と比較することにより、系の供給圧力に依存せず線形性が確保され滑らかなアクチュエータの制御が可能なことを明らかにした。
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