研究概要 |
機械や電器製品を設計する際の主要な作業の一つに,部品を平面上や空間中の適切な位置姿勢に配置する作業がある.近年の製品の小型化にともない,部品をできるだけ密に配置する技術が求められている.高密度の配置設計を短時間で高品質に行なうためには,設計初期のモデリング作業中に必要な解析作業を(多少不正確であっても)実行し,モデルを早い時期に修正することが効果的である. 製品の機能実現のために満たすべき条件の多くは,部品間の距離に関する制約に置き換えられる.そこで本研究では,モデリング中に常に図形間の距離に関する制約の充足を監視し,制約が満たされない場合には,図形に仮想的な力を作用させ図形を望ましい位置姿勢へ自動的に導びく手法の開発を進めている. 本年度は以下の結果を得た. 制約の整理 モデル作成中に解析することが有効な図形間の距離に関する制約を整理した.また既存のCADシステムのユーザインターフェイスの現状と,その問題点の調査を行なった.これらの作業の結果,図形間の非干渉制約と寸法制約の二種類が評価できれば,図形の配置設計の支援には十分であること,また既存のCADシステムでは,特に非干渉制約の評価機能が不十分であることが分かった. アルゴリズムの設計 寸法制約の多くは,幾つかの非干渉制約の組み合わせにより表現できることが分かった.そこでLin-Cannyの手法に基づいて,図形間の距離を高速に算出するアルゴリズムを実現した.さらに干渉が検出されると,図形間に適切な反発力を作用させ,非干渉制約を自動的に充足させるアルゴリズムを開発した. 実験的なプログラムの作成 アルゴリズムの評価を行なうために,実験的な2次元図形の配置設計支援システムを作成した.その結果,非干渉制約と寸法制約が指示された数十の図形の配置を,対話的な利用で支障を感じない速度で行なえることが検証できた.
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