研究概要 |
電気製品などのユーザインタフェースの設計作業には,平面領域内への図形配置と見なせるものが多い.このような配置設計では,配置対象の図形数は比較的少数(30程度)であり,それほど密な配置は要求されないが,操作性や美観など,多様でしかも数式化が困難な制約を評価する必要がある.そのため自動設計よりも,設計者の自由な発想や試行を優先した,対話的で直観的な手法が望まれる. われわれは,このような配置設計の支援手法として,力学的なシミュレーション技術に基づく新しい手法を開発した.従来の力学的なシミュレーションに基づく手法では,図形間の同軸関係や整列関係,線対称関係などの寸法制約の評価が困難であった.寸法制約の多くは,図形を結ぶ幾つかの仮想的なリンク機構の組合せに置き換えられる.このことを利用して,領域的な制約と寸法制約の両方が評価可能な手法を実現した. 研究途中で派生的に得られた成果を発展させた結果,本年はさらに以下の二つの技術を実現することができた. 高速な干渉検出 力学的な手法では,図形間の接触を頻繁に検出する必要がある.寸法制約の評価では,幾何的に・同等な干渉が何度も検出されるため,その結果を記録しておくことで,2回目以降の干渉検出の手間を大幅に削減できる.この技術を利用して,板金製品の曲げ作業の工程設計を高速化するアルゴリズムを開発した. 頑健な幾何計算 幾何的な計算では数値誤差が不可避である.そのため2図形の接触を安定的に検出するためには,数値誤差が影響を与えないように,ある微小な公差値よりも小さな幾何的な差異を無視する工夫が必要となる.この技術を発展させた結果,数値誤差により破綻しやすいとされていた様々な幾何処理を安定に実現する新しいアルゴリズムの開発に成功した.
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