研究概要 |
平成8年度は,電力系統の貯水池運用問題を例に取り研究を進め,以下の成果が得られた。 1.貯水池運用問題における不確実な要因として負荷需要および貯水池への自然流入量を想定してファジィ数で表現すると共に、新しい枠組みでの多段階意志決定問題としてこの問題を定式化した。すなわち,意志決定のための変数として各時間帯の貯水池の使用流量を考えると,負荷需要および自然流入量がファジィ数であるため,当然,その際の運用コストもファジィ数となると期待できる。 2.上で定式化された問題を解くために,従来の動的計画法(DP法)を,ファジィ数をも扱えるように拡張を行い,数値計算プログラムを開発された。ここで,各格子点における目的関数の計算には、論理積に基づいた拡張原理によるファジィ演算を適用した。また、最適パスの決定には,従来の目的関数値の大小比較に代わるものとして,メンバーシップ関数間の優越性を表す支配度によって行うこととした。これにより、同等とみなされる方策が複数存在する可能性が大きくなり、最終的な運用解はある幅を持った解として与えられると期待できる。更に,マルコフ性が同様に成立することや,前進型・後退型ファジィDP法の特徴についても明らかにした。 3.開発されたプログラムを用いて種々のケースについてシミュレーションを行った。その結果,最適解は問題のあいまい性を反映した幅を持った集合として決定されることが明かとなった。また,意思決定者は、その解集合の中から、適当な一つを選択して最終意志決定とすることになるが、特に、柔軟性、ロバスト性等を選択の基準とすれば、確定的手法では得られない優れた計画を提示することが可能になることが明らかとなった。本研究では,次時点に取るべき運用方策を、以降の運用に対する柔軟性が可能な限り保持され得るよう決定していくことを考え,後退型DP法をベースとした新しい手法を開発した。
|