近年の世界各国における電力供給に関する規制緩和は、IPP(独立系発電業者)などの分散型電源の電力市場への参入を促進させている。その結果、それらの電源による卸託送などが特定の送電線路群を過負荷にし、電力ネットワークのセキュリティを低下させる危険性がある。本研究では、このような電力フローの偏りを「電力ネットワークの知能化」により解消する方法を明らかにする。特に、個々の送電線のインピーダンスをパワエレ技術ベースの直列コンデンサや位相調製器などにより可制御にし、その制御機構にインテリジェンスを埋め込むための工学的手段および電力フローパターンの秩序生成原理を明らかにする。 今年度は、以下の研究成果を得ている。(1)実験室レベルの小規模なインテリジェント電力ネットワークを設計・試作し、前年度に得られた計算機シミュレーションの結果と比較検討した。(2)試作した小規模インテリジェント電力ネットワークの実験を通じて、自律分散システムの持つべき性質を明らかにした。また、電力ネットワークのトポロジー、線路インピーダンスの大小関係、位相調製器群の配置の仕方に依存して特徴的な電力フローパターンが存在することをモデル系統の固有値解析から明らかにした。この結果は、インテイリジェント電力ネットワークの秩序生成原理と関連性があるものと考えられる。(3)インテリジェント電力ネットワークが有効に機能する電力システムの構造と電力市場の環境について専門家や実務者と討議した。(4)太陽光発電に代表される環境負荷の小さい小規模分散型電源が、既存の電力供給システムと共存できるためのインテリジェント電力ネットワークに望まれる機能を検討した。
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