本研究では、超伝導エネルギー貯蔵装置(SMES)や核融合実験装置など直流大電流を必要とする用途への適用を前提に、数十MVA級で10kA以上の大電流の電流形電力変換器の並列多重化の回路方式と制御方式について検討する。 電流形電力変換器の多重化は、電流形電力変換器がほぼ電流源とみなせることから従来、交流側は並列接続によるものが一般的であった。しかし、大電流用途の多重化に必要な直流電流平衡用リアクトルをなくすことのメリットに着目し、変圧器一次巻線を直列接続することにより電流バランスを取る方法を計算機シミュレーションにより検討した。その結果、直流短絡モード(バイパスペアモード)が無い場合は並列に接続された変換器相互の電流分担が行われたが、変圧器を通じないバイパスペアモードが存在する場合、電流分担が行われないことが判明した。このようなモードは、1)パルス幅変調制御により交流電流の大きさを制御する場合、2)本研究で特に検討対象としているスナバエネルギー回生形回路においてスナバコンデンサが追加充電される場合、にそれぞれ発生する。そのため、複数台の変換器を交流側はトランスレスで並列接続し、直流側は電流平衡用のリアクトルを用いて並列接続するのが適当である、との結論に至った。複数台の並列接続により高調波を消去するには、2のn乗台の変換器によりn個の次数の高調波を消去できることがわかった。例えば、2台の変換器の多重化では、11次あるいは13次の高調波どちらかを消去できるが、その両方を消去するには4台の変換器を多重化することが必要であることになる。Δ-ΔとY-Δなどの結線の変圧器を組み合わせることにより、さらに高調波を低減することが出来る。 次年度は、2のn乗個以外の台数、例えば3台の電力変換器の並列多重化で効果的に高調波を低減する方法を検討するとともに、実験により、多重化の効果を確認する予定である。
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