本研究の目的は、電圧形PWMインバータを用いた可変速駆動システムが発生する放射性雑音と導電性雑音の両方を低減可能で、しかも一般性の高いEMI抑制法を確立する事である。 本研究ではまず、供試誘導電動機(3.7kW)を用いた実験と回路シミュレータを用いたシミュレーションを併用し、PWMインバータが発生する電磁雑音に対するモデルについて検討した。その結果、PWMインバータ・モータ間の配線が比較的長い場合は、モータの高周波等価回路は三相端子とフレーム間の3つのコンデンサのみで表わしても十分な精度で模擬できることを実証した。このモータの高周波等価回路は、コモンモードとノーマルモードの両方の高周波振動を同時に解析することができ、EMIの抑制法の検討の基礎となるものである。さらに、配線が短い場合の等価回路についても検討を行ない、π形の等価回路により模擬できることを確認している。次年度においては、得られた高周波等価回路をベースに、EMIの抑制法について詳細な検討を行なう予定である。 また、能動素子を用いてコモンモード電圧を打ち消す「アクティブコモンノイズキャンセラ(ACC)」の原理確認を実験により行なった。その結果、ACCは比較的簡単な回路構成でしかも小さな損失でPWMインバータが発生するコモンモード電圧をほとんど完全に相殺でき、漏れ電流の抑制、感電の防止、雑音端子電圧の低減などに大きな効果があることを実証した。次年度において、ACCを構成しているコンポーネントの設計法について、さらに詳細に検討する予定である。 本研究で得られた成果は、パワーエレクトロニクス機器が発生するEMI/EMCの理論的・系統的研究の発展に寄与するものと考える。
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