太陽熱、地熱、産業廃熱などの地域利用システム構築のために、コスト高で熱輸送効率の低い電磁型ポンプによる熱水輸送に替えて、大容量で高速熱輸送の可能な熱の超伝導電気流体力学(略してEHD)ヒートパイプを開発することが、本研究の目的である。EHDヒートパイプは、凝縮液と蒸気の二つの通路を有し、凝縮液は、EHDポンプによって凝縮器から蒸気器に還流させる。すなわち、従来のヒートパイプのウイックを、凝縮液通路とEHDポンプで置き換えたものと言える。 本年度は、研究実施計画にすでに述べたように、リングと角筒電極で構成されるEHDポンプの印加電圧と凝縮液流量の関係を明らかにした。すなわち、流れを乱さずに非接触で流量測定が可能な超音波液体流量計を購入し、計測システムを完成して流量を測定した。EHDヒートパイプによる長距離大量熱輸送を可能にするためには、長距離に亘って凝縮液を還流させるEHDポンプの開発が不可欠である。しかし、EHDポンプ1台の電気圧は、数十(Pa)と低いことが明らかになったので、凝縮液通路にEHDポンプを多段配置して電気圧を増やす方法を検討した。平成8年度の主な研究結果を以下に要約する。 (1)EHDポンプによる低沸騰点熱媒体中の電気圧は、印加電圧の上昇とともに増加し、印加電圧28(kV)の場合、ポンプ2台では1台時の28.8(Pa)の32.9%、3台では1台時の63.2%増加した。 (2)EHDポンプ(1台)の印加電圧の上昇とともに、低沸点熱媒体の流量はほぼ直線的に増え、印加電圧30(kV)で、流量は1.90(1/min)となった。 (3)EHDポンプの台数を1台から3台に増やすと、印加電圧30(kV)では、低沸点熱媒体の流量は40%増加した。ポンプ台数に比例して、流量が増えるように電極構造、配置を検討することが、今後の課題である。
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