太陽熱、地熱、産業廃熱を民生、産業に有効利用する地域熱輸送システムの構築のために、コスト高で熱輸送効率の低い電磁型ポンプによる熱水輸送に替えて、大容量で高速熱輸送の可能な熱の超伝導電気流体力学(EHDと略す。)ヒートパイプを開発することが本研究の目的である。EHDヒートパイプの特徴は、凝縮液と蒸気の流れる流路が併設され、凝縮器から蒸発器への凝縮液の還流に分極型EHDポンプを用いるところにある。 今年度は、研究実施計画で、EHDヒートパイプの熱入力をパラメータとして、印加電圧と熱媒体凝縮液流量および熱輸送量の関係を明らかにするなどを掲げ、これらの研究結果を踏まえて、EHDヒートパイプの熱サイクル確立条件と設計法を明らかにることを目標とした。しかし、研究の過程でEHDポンプで発生する電気的圧力が、作動流体の温度上昇につれて下がり、また、電圧印加後、電気的圧力が定常値に到るまで数分の時間を要するなど、これまでにない現象を観測した。そこで、まずは分極型EHDポンプの基礎特性を更に明らかにする必要があると判断し、電気圧と作動流体温度の関係、電気圧の時間変化などを明らかにした。これらに関する主な研究結果を要約すると次のようになる。 (1) 作動流体として絶縁油(G)を用いる場合、印加電圧32(kV)で印加電圧は、油温10℃で106.8(Pa)であったが、油温18℃で33.7(Pa)まで減少した。これは、油温の上昇とともに、絶縁油分子の熱運動が激しくなり、分子配向分極が妨げられた結果と思われる。 (2) 30(kV)の直流電圧を印加後、電気圧が定常値56.2(Pa)に到るまで約3分の時間を要した。これは、配向分極が熱運動と双極子間の相互作用によって妨げられた結果と思われる。今年度は、ヒートバイプの性能を大きく左右するEHDポンプの安定動作条件を検討することに終始してしまった。残された課題には、今後継続して取り組むことにしている。
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