本研究は、磁性流体の粘性が外部磁場によって可変となる性質を用いたセミアクティブダンパ構築の可能性について検討を行ったものである。本セミアクティブダンパは、従来の空気圧もしくは油圧タイプのアクティブダンパと異なり、メカニズムは単なる磁性流体封入シリンダ中のピストン運動であるため、一旦制御が破綻してもシステムの安定性が保持でき、また、装置自体が単純な液体封入シリンダと電気設備のみによって構築できるという大きな利点をもつ。 ここに本研究の成果および今後の研究課題について以下にまとめる。 〈平成8年度〉 磁性流体の粘性が、電磁石によって生みだされる磁場に対して可変となる性質をモデル化し、本ダンパを含むシステムの運動方程式を記述した。これが強い非線形システムであることを示し、非線形H無限大制御理論による補償器の設計法を提案、計算機シミュレーションによってその効果を確認した。 〈平成9年度〉 8年度の研究によって、磁性流体セミアクティブダンパの有効性が確認されたことから、実際に磁性流体セミアクティブダンパを設計・製作した。その後磁性流体の基礎特性を実測し、電磁石電流によって磁性流体粘性がダイナミックに変化することを確認した。 〈平成10年度〉 種々の振動実験を繰り返す事により、システムモデルの修正を行い、本非線形制御の優位性を確認した。 〈今後にむけて〉 電磁石の軽量化や、電磁石電流の制御に対して電圧制御から電流制御方式への移行を行い、装置の軽量化や、即応性の改善を行っていきたい。
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