研究概要 |
前年度構築した、交流電界下における高電界誘電特性観測システムを用いて、従来より厚い、屋外絶縁用がいしとして用いられているRTVおよびHTVシリコーンゴムの厚さ2,3,6mmのシート状試料を対象として、その体積(厚さ)方向のみならず、表面方向の誘電特性(静電容量と交流損失電流)の計測を試みた。また、屋外絶縁劣化診断法の一つである誘電性試料の撥水性について、試料の接触角の測定を行い、試料の吸水・乾燥過程を拡散の観点から検討した。具体的な研究実績は次の通りである。 1.水浸劣化による撥水性の低下と吸水量の関係を浸水溶液の導電率と温度をパラメータとして測定した。 2.上記試料の室温・空気中における乾燥に伴う撥水性と重さの回復過程を測定した。 3.上記測定とともに、高電界誘電特性を、試料の体積方向と表面方向で測定した。 4.試料の吸水を拡散と考えて、試料表面からバルク中の各層の吸水量の時間変化を数値解析した。 5.シート状試料の電極端部での、もれ電気力線に関係した容量を、測定と電界解析により評価した。 6.吸水量から拡散係数、接触角から表面エネルギーを評価した。また、体積方向と表面方向の誘電特性と上記の数値解析結果からバルク及び表面の等価漏れ抵抗成分を評価できる可能性を示した。 7.DSPを用いた高電界誘電特性解析システムの改良を進め、アベレ-ジングや2チャンネル同時・リアルタイム計測を可能とした。また、印加電圧遮断機能などを本システムに追加した。 これらにより本研究の主題である、新しい絶縁劣化診断法の指標となりうる物理量の特定と、その計測方法の開発・改善を進めた。これらの成果を基に最終年度には、試料の劣化および回復過程における各種特性測定結果の集積と、より詳細な電極端部の電界解析を進めていくことにより、研究テーマを完結させたい。
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