本研究は、今後屋外絶縁用がいしなどとして用いられるシリコーンゴムなどの撥水性高分子電気絶縁材料の、吸水劣化および乾燥回復過程を材料表面の撥水性のみならず、その高電界誘電特性からも明らかにしようとしたものである。シート状およびバルク状試料を対象として、交流損失電流波形計測システムを改良し、その厚さ方向のみならず表面方向電界印加によっても高電界誘電特性の計測を可能とした。 撥水性や誘電特性の測定は、試料の水浸劣化過程と室温・大気中での乾燥回復過程に対して行った。また、表面方向電界印加時の誘電特性測定用電極間の電気力線分布について、主電極形状や拡張ガード電極電位を変化させることにより、試料内部への電気力線の浸入深さを制御可能か検討した。その結果、電気力線の侵入深さは試料表面の電極間隔のみに依存することが確認できた。また、拡散による試料表面からバルク中への水分の吸収劣化および乾燥回復過程と、高電界誘電特性との対応を検討し、試料の誘電率は吸水量と良い対応を示すが、tan δは試料の種類により大きく変化して、吸水量とは必ずしも比例しないことが明らかとなった。また、劣化及び回復過程の試料の撥水性について、水浸劣化時の吸水と低分子量物質(LMW)の溶出、室温大気中での乾燥回復過程における水分の蒸発とLMWの試料表面への移動について、接触角やSTRI法、試料を浸した液体の表面自由エネルギーの変化を明らかにした。そして、以上の結果と交流損失電流波形計測による新しい屋外絶縁劣化診断手法の結果との整合性を検討した。 また、DSPを用いた高電界誘電特性解析システムの開発・改良を行い、リアルタイム計測による絶縁劣化診断と、絶縁破壊を未然に防ぐ印加電圧遮断機能などにより、本研究の主題である、新しい絶縁劣化診断法の開発とその改善を進め、それらを研究成果報告書としてまとめた。
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