高配向薄膜を積層構造としたコンタクト及びエピタキシャルコンタクトの作製とその特性について検討を行った。検討した系は、(1)Cu(111)/W(110)/Si(100)、(2)Cu(111)/Ta-W(110)/Si(100)、(3)Cu(110)/ZrN(100)/Si(100)及び(4)Al(001)/YSi_<2-x>/Si(001)の4種であり、(4)はエピタキシャルコンタクトである。(1)〜(3)の高配向コンタクトでは、それぞれの系で単一の高配向薄膜が得られていること、(4)ではエピタキシャルとなっていることをX線回折及び電子顕微鏡により確認した。(1)〜(3)の高配向コンタクトでは、いずれも良好なバリヤ特性が認められ、特にW(110)バリヤは、従来の多結晶Wをバリヤではシリサイド形成反応前に系が崩壊することと比べて、Wの均一なシリサイド反応によってバリヤが消費される温度(690℃)まで安定であることがわかった。Ta-W合金は全域固溶でありbcc格子をTaとWが置換した擬似的に単一なbcc格子となっておりCu/Siコンタクトの拡散バリヤとして適応したところ、Ta_<50>W_<50>ではTaおよびWそれぞれの反応形態が補完しあって単一バリヤよりも優れている700℃まで安定なバリヤ特性が得られた。ZrN膜は750℃の熱処理によっても安定であるが、800℃の熱処理による再結晶化により崩壊する。(4)のエピタキシャルコンタクトでは、熱処理に伴い、450℃以上の温度でAl_3Yの形成が生じこれによって系が劣化することが知られた。以上のことより、エピタキシャルコンタクトとして構成可能な材料はその材料選択性が狭く熱的安定性と必ずしも両立しないことが予測される。一方、高配向薄膜を用いたコンタクトは、予想以上にその熱的安定性に優れていることが明らかとなり、有望な発展が望まれるものと思われる。
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