研究概要 |
1.レーザ光照射下において、キャリア密度5×10^<16>,3×10^<17>、1×10^<18>cm^<-3>の3種類のn型GaAs試料でのトンネル電流-電圧スペクトルを走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて測定し、微分コンダクタンスの光変調効果を調べた。その結果、すべての試料において明瞭な表面光電位効果がみられた。また、低キャリア密度の試料ほど表面空乏層を小さくするために必要な表面正電荷量が少ないとともに、不純物を介した再結合確率が低いためフォトキャリアがより効率的に働けることを反映して、低キャリア密度の試料ほど光に対する感度が高いことがわかった。 2.n型GaAs上に自己形成的にInAs量子ドット構造を形成した試料において、微分コンダクタンス特性の面内分布、ならびにそれに対する光照射効果を調べた。その結果、特徴的な特性を示す測定点が何点か確認され、それがInAs量子ドットを介したトンネル効果を観測しているものと考えている。特に、InAs濡れ層のみの試料と比較すると、微分コンダクタンス自体やその光照射効果において明瞭な差異が認められている。InAsドットは、InAs濡れ層よりもわずか一原子層分以下の過剰供給で形成されるが、ここでの結果は、InAsドットが形成された途端に急激に表面電子状態が変化するということを示している。 3.InAsドット構造を有する試料について、導電性の探針を利用した原子間力顕微鏡による表面構造と電流-電圧特性の同時観察を試みており、探針がドットのエッジに接した時に大きな電流が流れる様子が観測されつつあるが、探針の金属皮膜の摩耗耐久性などの問題から、定性的・定量的議論を進めるにはまだ至っていない。
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