1サイクルのプロセスが、1.水素化合物分子(本研究ではSi_2H_6)のパルス照射と、2.表面励起によるHの離脱と吸着原子(本研究でSi)の表面泳動、からなることを特徴としたサブ原子層エピタキシ-(SALE)法に関し、平成8年度までに得た成長条件と成長特性との関係に関する知見を基に成長機構のモデル化を行った。この研究を通じ、SALE法の原理から成長制御に至る全体像が明らかとなり、SALE成長技術の基盤を確立した。また、この知見を基に、SALE法の特徴である1.単分子層未満の水素化合物前駆体の吸着と2.表面励起による吸着種の表面泳動の交互操作によってディジタルエピタキシ-を行うという新手法を一般化し、他の水素化合物分子/IV族半導体の系に展開する上での指針を得た。本研究では、さらに、単原子層単位で成長するSi、Geの原子層エピタキシ-(SALE)法についても検討を進めた。不純物のない水素化合物分子の熱分解種の利用を初めて提案し、単原子層単位成長の実現に必要な特性である単原子(分子)層の飽和吸着(自己停止機能)が得られる反応種を熱分解種から探索した。その結果、熱分解Si_2H_6を用いることで、1分子層の自己停止機能が得られることを見出し、SiのALEに成功した。同時に、Si_2H_6熱分解種の表面反応特性を明らかにした。また、熱分解GeH_4がGeのALEに有用であると予測される結果を得た。本研究を通じ提案した水素化合物分子を用いたSALE法および熱分解ALE法はIV族半導体の原子スケールディジタルエピタキシ-法の広範な進展に寄与することが期待できる。
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