研究概要 |
従来、研究が進められている単原子層エピタキシ-(Atomic Layer Epitaxy,ALE)法は、反応ガスが単原子(分子)層で飽和吸着すること(自己停止機能)を利用して、単原子層単位でディジタルにエピタキシ-を行う方法である。本研究では、不純物の影響のない水素化合物分子を用いてディジタルエピタキシ-の実現を目指した。水素化合物分子は飽和吸着量が常温で単分子層未満であるため、これまでALEの実現は難しかった。本研究では、従来の方法とは異なり、単原子層単位ではなく、単原子層未満であるサブ原子層を単位としてディジタル成長可能なサブ原子層エピタキシ-(SALE)法を提案した。具体的には、水素化合物分子の照射と表面励起による水素の離脱と吸着原子の表面泳動を1サイクルとして、サイクル当たり飽和吸着量であるサブ原子層を単位としたディジタル成長を実現した。この方法は、このように、これまでディジタルエピタキシ-で注目されていなかった表面泳動を組み入れることで実現した。Si_2H_6/Si(001)系を用いて、SALE法の成長条件と成長特性との関係を明らかにし、SiのSALE成長機構の定量的モデル化を達成した。これにより、成長原理から成長制御までのSALE技術の全体像を明らかにした。これらの結果は、吸着量が0〜2分子層の水素化合物分子であれば、その飽和吸着量を単位としたIV族半導体のSALE成長が可能であることを示唆している。一方、水素化合物分子の熱分解種がALEを実現するための1分子層の飽和吸着量を示す新たな前駆体として機能することを初めて提示し、水素化合物分子であるSi_2H_6の熱分解種を用いてGe基板上のSiのALEに成功した。この結果からさらにSi/Ge界面が急峻であることが得られた。また、熱分解GeH_4がGeのALEに有用であると予測される結果を得た。本研究を通じ提案した水素化合物分子を用いたSALE法および熱分解ALE法はIV族半導体の原子スケールディジタルエピタキシ-法の広範な進展を促し、Si/Ge系量子井戸構造デバイスの新たな応用展開に寄与することが期待される。
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