研究概要 |
本研究の目的であるBaフェライト膜のSi上へのエピタキシャル成長を効率よく達成するため、中間層として提案したコランダム構造を持つα-Fe_2O_3および簡単な構造を持つ鉄酸化物のα-Al_2O_3(0001)、Si(111)、Gd_3Ga_5O_<12>(111)基板上へのエピタキシャル成長条件について検討し、以下の知見を得た。 1.Feアセチルアセトナトを原料とした比較的高真空下でのMOCVDにより、極めて良質なα-Fe_2O_3薄膜がα-Al_2O_3基板上に基板温度425℃、原料供給律速下でエピタキシャル成長することを見い出した。また、この手法において酸素供給分圧を低減することにより、最終目的であるBaフェライトとα-Fe_2O_3以上に格子整合するFe_3O_4スピネルの良質な薄膜がα-Al_2O_3基板上にFe_3O_4(111)//α-Al_2O_3(0001)、Fe_3O_4[110]//α-Al_2O_3[1100]の関係でエピタキシャル成長することを初めて明らかにした。 2.Si(111)基板上にMOCVD法によりα-Fe_2O_3およびFe_3O_4薄膜の成長を試みたが、エピタキシャル成長は達成されなかった。これは、Si表面の酸化が原因と考えられる。このため、表面酸化防止層として高真空下、低温での結晶化が期待される岩塩型結晶構造を持つ(Ni,Fe)O層の成長を試み、パルスレーザー堆積によりSi(111)基板上にエピタキシャル成長することを確認した。この結果および1.より、Fe_3O_4(111)//(Ni,Fe)O(111)//Si(111)構造がBaフェライトエピタキシャル層の成長に最も有望であり、傾斜組成を用いなくても本研究の目的が達成可能であることが示唆された。 3.Baフェライト薄膜のα-Fe_2Oおよびα-Al_2O_3(0001)層上への格子整合性を調べるため、スパッタ法によるこれらの層上へのエピタキシャル成長を試みた。その結果、基板温度500℃以上でBaフェライト薄膜がエピタキシャル成長することを明らかにした。
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