研究概要 |
本研究の目的である良質な強磁性体一半導体ヘテロエピタキシャル構造を実現するため、半導体上への磁性酸化物層のエピタキシャル成長条件を探査し、以下の新しい知見を得た。 1.硫化アンモニウム溶液を用いて硫黄終端化したGaAs(100)基板上に、電子ビーム蒸着により基板温度200℃で強磁性Fe_3O_4(100)薄膜がエピタキシャル成長することを初めて見い出した。この基板温度以上では、終端化した硫黄が表面から脱離するため、多結晶膜となった。上記条件で形成された薄膜(20nm)を初期層として、その上に基板温度450℃で成長されたFe_3O_4(100)エピタキシャル膜は、膜と基板の面内結晶方位関係Fe_3O_4[100]//GaAs[100]で成長し、良好な結晶性を示した。また、これらの薄膜の結晶性は、主に膜と基板の格子不整合に支配されることが明かとなった。一方、GaAsと同様な格子定数を持つSi(100),(111)の水素終端基板上には、Fe_3O_4薄膜およびα-Fe_2O_3薄膜のエピタキシャル成長は達成されなかった。これらの結果は、膜成長開始時の半導体表面の酸化を抑制するには、酸素に対し安定な最表面を形成するイオンによる終端化が極めて有効であることを示唆している。 2.Baフェライト薄膜のα-Fe_2O_3およびα-Al_2O_3(0001)層上への格子整合性を調べるため、スパッタ法によるこれらの層上へのエピタキシャル成長を試みた。その結果、基板温度500℃以上でBaフェライト(0001)薄膜がエピタキシャル成長することを明らかにした。 以上の結果は、本研究の最終目標である磁気異方性の強い強磁性体と半導体のヘテロエピタキシャル構造は、強磁性層としてBaフェライトに固執することなくFeをCo等で置換したCoFe_2O_4を、また半導体としてGaAsを用いることにより実現できることを意味している。
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