ペロブスカイト型構造のチタン酸ストロンチウム単結晶、チタン酸バリウム・ストロンチウムセラミックスおよびルチル構造を有する二酸化チタンセラミックスにおいて、酸素空位が電気伝導に及ぼす影響について検討した。その結果、底電界においてはエレクトロニックな電荷が電気伝導の主役を演じているが、高温高電界になると酸素空位が障壁を越えて移動するようになり、不可逆的変化の生じることがわかった。すなわち、酸化物中で正の有効電荷を有する酸素空位は陽極から陰極へ向かう力を受け、移動する。酸化物中のアクセプターイオンは移動できないから、陽極側にとり残されp型領域を形成する。一方、陰極側へ移動した酸素空位はドナーとして振る舞い。陰極前面にパイルアップする。その結果、酸化物中には順方向にバイアスされたpm接合が存在することになり、伝導性が増加する。 pm接合の存在は電流・電圧特性の非線形性によって裏付けられた。ほかに関連する現象として、陽極に白金を使用した場合には、その酸素に対する触媒効果によって酸素空位が新たに形成され、伝導度変調が大きくなること、陰極側で酸素空位のパイルアップが著しくなると陰極からの電子注入があり、時間とともに電流が振動すること、なども確認された。
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