研究概要 |
本研究ではスパッタリングプロセスにおけるプラズマからのイオン照射に関連する膜特性への影響を窒化物と酸化物膜において調べた.ターゲットを対向型にすることは従来法の基板をターゲットの正面に置く方式に比べイオン照射が減少する方式であるが、AlN膜作製においてc軸のそろった膜を得ることが難しい.この疎外要因が基板へのイオン衝撃によることを示した.ターゲットの一方を強制的に正にバイアスし,電子をその電極へ流すことを交互に繰り返す方式(交代式スパッタ法)で膜を作製すると,膜のイオン照射を軽減するのに役だった.このことはAlN膜作製において,過度のイオン照射がc軸配向性や結晶粒成長を抑えていることを示すものである.基板前面に網を設置することも膜を衝撃するイオン数と関連しているし,対向ターゲット方式によるスパッタ法では滋界分布も結晶成長に大きく関係してくることを示した.膜特性と飛来するイオンが密接に関連していることを示した.酸化物スパッタ膜作製においては,ZnO膜でもっとも低い抵抗率といわれていた150-200μΩcmの値の膜は単に高速酸素原子の膜衝撃を取り除くだけでは実現できず,イオン衝撃以外の要因が関係していることが明らかになった.ZnO:Al膜においてZn原子の添加が抵抗率の低下に寄与することを示した.膜中の欠陥(確定したものではない)がZn添加により減少することを意味する.結晶成長初期の核形成の増大が原因と考えられる.ITO膜については,(00・2)配向したAlN膜を形成してガラス基板上に(222)配向したITO膜を形成できた.AlN膜上のITO膜はガラス基板上より少し低い抵抗率を示すにとどまった.キャリア密度はかなりの増大がみられたが,これは結晶中の欠陥が減少したことによると考えられる.しかし,キャリア移動度の低下が生じたため抵抗率の大幅な減少は見込めなかった.
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