研究概要 |
昨年度までの研究における計算機解析で,高性能Nd-Fe-B系ナノコンポジット磁石を得るための軟磁性相の量および結晶粒径の大きさ,それらが実現された際に期待される磁石特性が明らかとなってきている.しかしながら解析から期待される磁石特性と実際の実験で得られる特性の間には,未だ大きな開きがあり,これを解明することでより優れた磁石を得るための指針が得られると期待される.そこで,まず,解析方法を改良した.改良した解析法を用いて,最適の軟磁性相の量および結晶粒径の大きさを計算したところ,結晶粒径としてはおおよそ20nm,軟磁性相の量としては50-60%程度の磁石で最も優れた特性が期待されることが明らかとなった.また,粒界における交換相互作用の強度は,内部の強度の半分程度まで小さくなっても磁石特性の劣化を引き起こさないが,結晶粒界毎に強度のばらつきが存在すると特性の劣化が起こることが知られた. つぎに,非晶質Nd-Fe-Bを結晶化させて,平均結晶粒径と軟磁性相の量が上記の値とおおよそ一致するナノコンポジット磁石を作製した.得られた最大エネルギー積は,依然として,計算機解析から期待される値よりも小さなものであった.この原因は,残留磁化が解析から期待される値ほど大きくなく,減磁曲線の肩が解析ほど張っていないためであった.この結果と解析結果の比較検討から,実際の材料においては結晶粒界毎に交換結合の強度のばらつきが存在し,これが特性を劣化させていると考えられる.従って,均一な組織の実現により磁石特性が著しく改善されることが期待される.
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