液体/固体界面が放電現象に及ぼす影響を明確にする目的で、第一に変圧器油を満たした試験容器内に刃-平板電極系を設置し、刃電極に直流高電圧を印加した場合の電気伝導特性について、電極系の幾何学的対称面に挿入したポリエチレン絶縁板の影響を詳細に調べ検討した。その結果、絶縁板の挿入によって伝導電流を激減すること判明した。これは、電気流体力学(EHD)効果に基づく流体力学的抵抗の増加と絶縁板表面の帯電による刃電極先端の電界緩和との相乗効果から生ずる現象であることを理論的に検討し明確にした。第二に当初の研究計画である液体窒素中の固体/液体界面で生ずるインパルス沿面放電について、放電進展に関する圧力効果、放電極性効果、放電電流と電荷、放電進展後の固体表面帯電などの基本的特性を実験的に測定し、次のような結果を得た。(1)大気圧沸点にある液体窒素中において、放電様相の極性効果は殆ど見られず正、負ストリーマはいずれもトリ-状である。この結果は、変圧器油中における様相(正極性放電はトリ-状、負極性放電はブッシュ状)とは異なる。また、正極性放電の進展長は、負極性放電よりも長くなる。(2)0.1〜1.0MPaまでの範囲で加圧した液体窒素中において、放電進展長は正、負いずれの場合も短くなる。また、正極性放電の様相は加圧時においてもトリ-状であるが、負極性放電の様相は圧力を増すと共にトリ-状からブッシュ状へと変化する。これらの結果は、放電時の注入エネルギーによって生ずる液体窒素の気化現象が、沿面放電の進展機構に関与していることを明らかに示している。(3)固体表面は放電進展後に帯電される。帯電された電荷は時間経過と共に減少し、約15分後にはほぼ一定値に落ち着く。現在、これらの研究は続行中であり、さらに詳細な実験と理論的検討を行う予定としている。
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