研究概要 |
光重合して共役鎖構造を形成するジアセチレン誘導体の水面上単分子膜構造を直接観察し,その成長機構を検討した。使用した有機分子は10.12ペンタコサジイン酸カドミウム塩で、置換基をポリマー主鎖に組み合わせることによって広範囲の機能が期待できるため、機能素子材料として興味が持たれているものである。これまでの研究で,ジアセチレン単分子膜結晶が水面上で左右両回りのらせん構造を形成するすることなどを明らかにしてきたが,今年度は紫外線重合中の直接観察実験に加えてコンピュータによる分子力学シミュレーションなどの手法により,さらに次のような知見を得ている。 (1)らせん構造が形成される原因を製膜条件やジアセチレンの分子構造などから検討し,これが有機分子の二次元単分子膜に特有の非対称性によるものであることを明らかにした。 (2)ジアセチレン単分子膜を紫外線重合する際に,重合前後において明瞭な表面構造変化が起こることを明らかにし,分子力学法により検討した。この結果,表面構造変化の原因が不飽和結合部に付加する酸素によるものであることを明らかにした。 (3)これまで報告されてきたジアセチレン単分子膜の結晶構造については報告者によって多少異なっていたが,分子力学計算とX線回折結果から信頼のおける単位胞構造を得ることが出来た。 さらに今年度は,試料冷却による結晶成長への影響などを検討するための装置を作成中である。
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